修了生インタビュー #1

 

稲村厚(いなむら・あつし)さん

20094月入学(第6期生) 

神奈川県川崎市 司法書士

 

週末の遠距離通学は

日常と非日常を行き来する、快適な時間だった

 

●大学院との出会い

 1990年代の終わりに受けた南山大学人間関係研究センターの公開講座がきっかけです。ちょうどその頃、「紛争を話し合いで解決する」ことについて学び直したいという思いがあり、人間関係やコミュニケーションの領域を取り入れることを模索していたんです。

 最初に受けた『人間関係トレーニング』講座を皮切りに、人間関係研究センター主催の講座を次々と受講する中で、「これを改良して、自分のプログラムを作りたい」という思いが募っていったのですが、最後に受講した『Tグループ』での体験が衝撃的だった。それまで「自分は様々なことを器用にこなせる人間だ」と思っていたけど、それは葛藤に気づかず逃げていただけだった。Tグループでは逃げ場がなく、辛く、受け入れられないような体験をし、久しぶりに引きこもりたい気分になりました(笑)。

「自分の何がいけないのか?」と自信喪失気味になっていたんですが、半年ほど経った時、「こういうことだったのか」と腑に落ちた。自分をめぐる様々な事柄が起きているのに、今まではそれを避け、見ないようにしてきたんだなぁと。それではまずい。もう少し勉強したい。自分が気づいたことを体系的に勉強して、論文にまとめたい。そう思って入学を決めました。

 

●関東からの遠距離通学

 ちょうど僕らが入学した年から、週末の金曜、土曜、日曜日だけの通学でも単位がとれるカリキュラムになったんです。関東から通学していた同期も二人いて心強かったし、先生方や先輩達も「宿はどうしてる?」とか「新幹線の学割が使えるよ」など、アドバイスや気遣いをして下さった。

 毎週、金曜日は午前中に仕事を片付け、あとは事務所のスタッフに任せて、6限スタートの1840分に間に合うよう、新幹線で名古屋へ向かう。年齢的には50歳になる手前だったんですが、体力的なしんどさはなかったですね。

 逆に、大学院は日常とは全く違う世界だったし、一種の「余暇」みたいな感覚もありました。余暇の中で勉強できているというか、仕事にも影響を与えてくれる余暇を持っていたような…。日常と非日常の世界を行き来するような感覚で、今思えば、仕事とは全く別の時間がストレス発散にもなっていたのか、あの頃が一番体調もよく、快適だったような気がします。

 

●「独りよがり」の思考が変わった

 これからの社会は縦割りではどうにもならないことが増えていくと思うんです。「司法」と「福祉」など、学問分野も重なり合っていく。そんな中、大学院で仲間とともに体験を通して実践していく学びを得たことで、それまでの「独りよがり」の思考を変えることができたように思います。ここで学んでいなければ、力で相手をねじ伏せたり、理論で相手を打ち負かせるようなやり方のままだっただろうと。

 たとえば、「正義」という言葉を振りかざして、相手に「正しい」とか「間違っている」と説いても、人間は仲間になれないんです。自分の弱さを自己開示したり、「こうしてほしいんだ」という思いを伝えたり、フィードバックしながら関係性を築いていく中で、課題を解決していく。そんな考え方が自分の中に生まれ、「それこそ自分が目指していた方向だったんだな」と思いました。

 

●入学を考えている方へのメッセージ

 遠方からの通学でも、「ここで学びたい」という意欲があれば、それに応じてやりくりできると思います。週末通学だけでも単位がとれるようにカリキュラムが組んでありますから、あとは、ご自身の決意だけ。自分の思いを優先させるというか、「ここでしか手に入らないもの」を、本当に手に入れたいと思うかどうか。その気持ちが逡巡を超えるんじゃないかと思います。